介護手記 70代 女性

ここ数年前の事ですが、私がパート勤務をして家に帰って来ると、主人が毎日のようにサイドボードの6段くらいある引き出しを全部開けて何かしているので「何しとるが?」と聞くと「お前が引き出しの中片付けんから整理しとるがんや!!」と機嫌の悪い顔して答えるので、何も言わず夕食の準備をするような毎日が続きました。
昔のことを思い出すようでが昭和50年頃、土地の事で主人が私の実家を相手に喧嘩をし、永い間疎遠になっておりましたが、最近になって、またしても問題になる事が起こり、どうすることも出来ず知り合いの方に仲に入ってもらい、ようやく無事解決することができました。その様子をみていた娘達が、一度頭の検査をしてもらわないと駄目だと言い出し、長い間血圧でかかりつけの病院で無理やり脳の検査を受けたのですが、別に異常がない。それどころか頭が良い方だと言われてしまいました。 夜になると足を鍛えなくてはだめだと言っては、晩酌をし、夕食を済ませてから出かけていきます。昔から夜はほとんど家に居たことはありませんでした。
夜中12時、1時に帰ってきては暴れる人でした。怖さのあまりよく外に逃げて行ったものです。すると、「お前はよく行く所があるなあ!」と言ってにらみつけました。
私は、人に迷惑をかけることは出来ないし、夜中じゅう外でうろうろしていました。雪の降る寒い寒い夜でも怖くて家に帰れませんでした。そのうち今度は家に泥棒がいると言い出しました。「ええ泥棒って私のこと?」主人はいつもへそくりをしていることはそれとなく解かっておりました。多分いろいろ入れ替えているうちに解からなくなったのだと思います。それにしても何処へやったことかと思っていたところ、「ほら見てみ、財布の中千円しかのこっとらんがや。」と言って私の横にきて革の財布を思いっきて引きちぎってしまいました。「いくら入れてあったが?」って聞いても答えてくれません。そのうち娘が来て盗っていったと言い出しました。今度は近所の人になり、次は「いや向かいのアパートにすんでいる人が自分達が出かけた間をみて泥棒に入った。」等といろいろなことを妄想し始めました。土地の件でお世話になった知人があんまりひどいドメステックバイオレンスの紙を見せて、相談するように電話番号を教えてくださいました。最終的に市役所に行くことになりました。すぐに介護課にまわされ、まず市の指定病院へ本人を連れ出すこと、本人を前にして話せないから状況を書類にして受付に渡すことをすすめられました。
早速、脳の検査を受けました。頭の方は別にいいけど記憶の海馬が狭く認知症と診断されました。早速薬をもらい、治療を受けました。いわれたようにして市役所に報告したところ認定を受け、ケアマネジャーさんがついてくださり、あの怖い出来事が嘘のようにしずかになり、楽になり、うれしくてたまりませんでした。ところが、やがて1年もたっていないころから車のことを言い出しました。2、3年前ころからよく道を間違えるようになり、事故をおこして車を壊してしまったのですが、やめるわけにもいかないだろうといって新車を娘達と相談して買うことになりました。そのうち免許の書き換えの時が来ました。予約をしたのですが、自信がなかったのか、当日になって免許証を断念しました。免許証もないことだから、娘が自分の子供に車を譲りうけたいと言い出しました。家にあると無免許で運転することがあっては困るといわれ、しぶしぶ納得しました。車が大好きな人なので、家のためにもとても役に立つ人でした。車を渡すときは、快く納得したはずなのに、今度は車がない誰かが盗っていったと言い出しました。H22年の12月のことです。夜中の2時半ごろ主人がアノラックをきて玄関にたっているので、「何しとるがんけ?」って聞くと、今から車をさがしにいくと言います。会社の仕事で越の潟に車を置いてきたから見にいくといって歩きだしました。説明してもわかる人でもないし、黙ってついていくしかありません。みぞれまじりの寒い寒い夜です。主人は歩きながら斜めに転んでしまいました。一人で起き上がることが出来ず、顔、手、足も傷だらけ、それでも車を探しは諦めません。自分の力ではどうにもならず救急車を呼びました。病院に運ばれ顔手足の治療をしてもらい家に着いたのは、朝の5時ごろでした。その明日からは、近くのアパートへ車探しに行っております。そのうち「車泥棒めぶっ殺してやる刑務所に入っても平気や」相変わらず普通じゃないことをいう人です。娘や娘婿さん達が説得しても聞く耳を持っていません。係りのケアマネジャーさんも大変心配してくださり、正月が明けるのを待って専門病院に連れてきてもらいました。 早速治療をうけ今までのことを考えると随分平和になりました。暴言に悩まされていた長い年月でしたが、何分の1になりました。「寝るから布団を置いてくれ。」というので掛けてあげると3分もたたないうちに起き上がって座りだします。そんな事平気で何度でも繰り返します。この頃は布団の中の生活が長くなりました。でも目が覚めるとお酒とタバコです。最近毎日のように問いかけてくる話題が決まっています。ごみの事、土地のこと、老人クラブのこと、誰かが何かを言ったこと等、そのうち話しの内容がまったく違ってしまいます。いつものことですが私が、「風呂に行ってきます。」と書置きしていっても、帰ってくると、「何処にいっていたがこんな長い風呂あるかといって責めてきます。風呂に行くたびに怖い思いをしています。ああいつまで続くのかこの思い!!