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【医師監修】認知症の「無気力・アパシー」とは?原因、症状、家族ができる寄り添い方
『3分で読める認知症』として、『㉑ 無気力・アパシー』をお届けいたします。
「以前はあんなに楽しそうにしていたのに、最近は何をするのも億劫そう…」
「話しかけても反応が薄くて、どう接したらいいのか分からない…」
認知症の方に見られる「無気力・アパシー」の症状は、ご本人だけでなく、ご家族や介護する方にとっても大きな悩みの一つではないでしょうか。
大切な人が以前と変わってしまったように感じ、戸惑いや不安を覚えることもあるかもしれません。
この記事では、そんな認知症における「無気力・アパシー」について、その原因やうつ状態との違い、具体的な症状、そして何よりも大切な「どのように関わっていけば良いのか」という対応策や介護のポイントを詳しく解説します。
もしかしたら、この記事を読むことで、今抱えている悩みを少しでも軽くするヒントが見つかるかもしれません。諦めずに、一緒に向き合っていくための一歩を踏み出しましょう。

■無気力・アパシーとは?
認知症の方に見られる「無気力・アパシー」という言葉をご存じでしょうか。これは、意欲や自発性が低下し、周囲の出来事に無関心になってしまう状態を指します。以前は活発だった方が、だんだんと何もやる気がなくなってしまう様子を想像してみてください。この状態は、認知症に伴う脳の機能低下が原因の一つと考えられています。
■無気力・アパシーとうつ状態の違い
無気力・アパシーとうつ状態は、一見似ているように思えますが、いくつかの点で異なります。
- 感情:うつ状態では、悲しみや絶望感といった強い感情が伴うことが多いですが、無気力・アパシーでは、感情の起伏が少なく、むしろ平坦な状態であることが多いです。
- 原因:うつ状態は、脳内のセロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることが原因の一つと考えられています。一方、無気力・アパシーは、脳の機能低下が主な原因です。
- 対応:うつ状態には、抗うつ薬などの薬物療法が有効な場合がありますが、無気力・アパシーに対しては、非薬物療法が中心です。
■無気力・アパシーの具体例
無気力・アパシーの状態は、人によって現れ方が異なりますが、以下のような行動が見られることがあります。
- 会話の減少:以前は積極的に話していたのに、だんだんと会話量が減ったり、質問にも答えなくなったりする。
- 活動量の低下:散歩や趣味を楽しんでいたのに、だんだんと部屋に閉じこもりがちになる。
- 身づくろいの変化:入浴や着替えを拒否したり、同じ服を繰り返し着たりする。
- 食事の量の変化:食欲が減退したり、逆に過食になったりする。
■無気力・アパシーが起こる原因・メカニズム
無気力・アパシーが起こるメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、脳の機能低下が大きく関わっていると考えられています。
特に、脳の前頭葉の機能が低下することで、意欲や計画性、判断力などが低下し、無気力・アパシーの状態を引き起こす可能性があります。
■無気力・アパシーへの対応
無気力・アパシーへの対応としては、以下のものが挙げられます。
- 環境の工夫:居室を明るく清潔に保ち、季節を感じられるような工夫をする。
- コミュニケーション:穏やかな声かけをしたり、一緒に歌を歌ったり、昔話をするなど、コミュニケーションを積極的に行う。
- 軽い運動:体を動かす機会を増やすため、軽い体操や散歩などを促す。
- 食事:栄養バランスの取れた食事を促し、食事の時間を大切にする。
- 趣味の支援:以前から興味を持っていた趣味の活動を支援する。
■無気力・アパシーに対して介護するときのポイント
無気力・アパシーの方を介護する際には、以下の点に注意しましょう。
- 焦らず、ゆっくりと:急かしたり、叱ったりせずに、ゆっくりと時間をかけて接しましょう。
- 選択肢を与える:何をしたいか、何を食べたいかなど、選択肢を与え、本人の意思を尊重しましょう。
- 成功体験:簡単なことから始め、成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻せるように支援しましょう。
- チームで連携:介護職員や他の家族と連携し、一貫したケアを提供しましょう。
無気力・アパシーは、本人だけでなく、家族や介護する人にとってもつらい状況です。
しかし、適切にケアすることで、状態の改善が期待できます。あきらめずに、根気強く向き合っていくことが大切です。