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認知症
【医師監修】前頭側頭型認知症の症状と介護の重要ポイントを解説
『3分で読める認知症』として、『⑤ 前頭側頭型認知症』をお届けいたします。
前頭側頭型認知症は、人格や行動、言葉の変化が特徴の進行性認知症です。比較的若い世代にも発症しやすく、家族の負担も大きくなりがちです。
本記事では、症状や介護の重要ポイントについてわかりやすく解説します。
前頭側頭型認知症:人格や行動、言葉の変化を引き起こす認知症
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ失われていく進行性の認知症です。アルツハイマー型認知症と異なり、記憶障害よりも、人格や行動、言葉の変化が特徴です。比較的若い人(40~60歳代)に発症することが多く、治療が困難なため、患者さんやご家族にとって大きな負担となります。
■ 主な症状
前頭側頭型認知症(FTD)は、大きく分けて2つのタイプに分類されます。
1. 行動異常型
- 性格や行動の変化:無遠慮な言動、攻撃性、多弁、性衝動、無関心、無気力など
- 社会性の欠如:マナー違反、窃盗、放浪など
- 認知機能障害:記憶障害、判断力低下、実行機能障害など
2. 言語型
- 失語:言葉の意味が理解できない、言葉が出てこない、なめらかに話ができないなど
- 言語理解障害:指示が理解できない、むだが多くて長い話をするなど
- 行動異常:軽度から中等度の行動異常がみられる
これらの症状は、病気の進行とともに悪化していきます。
■ 治療法
前頭側頭型認知症(FTD)は進行性の病気のため、根本的な治療法はありません。しかし、症状を緩和するための治療法はいくつかあります。
- 薬物療法:抗うつ薬、抗精神薬、抗不安薬などが使用されます。
- 非薬物療法:認知機能訓練、作業療法、理学療法、介護支援などがあります。
■ 予後
前頭側頭型認知症(FTD)の進行速度は個人差が大きいですが、一般的に発症してから5~10年ほどで介護が必要になります。
■介護におけるポイント
前頭側頭型認知症(FTD)の介護は、患者さんの症状に合わせて、個別にケアプランを立てることが重要です。また、周囲の理解と協力も不可欠です。
- 安全な環境づくり:転倒やケガを防ぐために、段差をなくしたり、滑りにくい床材を使ったりするなど、住環境を整備します。
- 生活習慣の維持:規則正しい生活習慣を維持し、適度な運動を取り入れるようにします。
- コミュニケーション:患者さんの気持ちを尊重し、ゆっくりと分かりやすく話すようにします。
- 専門家のサポート:介護サービスや医療機関のサポートを受けながら、介護を行います。
■ 家族の役割
前頭側頭型認知症(FTD)の患者さんは、周囲の人からの理解とサポートが不可欠です。家族は、患者さんの病状について理解を深め、適切なサポートを提供することが重要です。
- 患者の意思尊重:患者の意思を尊重し、できる限り自立した生活を送れるように支援します。
- 介護負担の軽減:介護は負担が大きいため、家族だけで抱え込まず、周囲に助けを求めたり、介護サービスを利用したりすることが大切です。
- 情報収集:前頭側頭型認知症(FTD)に関する情報収集を行い、正しい知識を持って患者さんを支えます。
- 自身の心身のケア:介護は精神的にも肉体的にも負担が大きいため、自身の心身のケアも忘れずに。
前頭側頭型認知症(FTD)は、患者さんにとってもご家族にとっても大変な病気です。しかし、正しい理解と適切なサポートがあれば、症状を緩和し、質の高い生活を送られます。