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【医師監修】認知症の症状と介護:家族と施設職員のための羅針盤

『3分で読める認知症』として、『⑨ 認知症の症状』をお届けいたします。

認知症は、本人にとってだけでなく、家族や施設職員にとっても大きな負担となります。しかし、症状を理解し、適切な対応をすることで、患者さんの生活の質を維持することは可能です。

ここでは、認知症の症状を中核症状と周辺症状(BPSD:行動・心理症状)に分けて解説し、治療法、家族や施設職員が患者さんに接するときのポイントについて説明します。

■中核症状と周辺症状(BPSD)

中核症状は、認知症の診断基準となる症状です。代表的なものとして、以下のものがあります。

  • 記憶障害:最近の出来事を忘れたり、約束を守れなかったりする。
  • 見当識障害:自分がどこにいるのか、今が何月なのかわからなくなる。
  • 判断力障害:物事を正しく理解・評価できなくなり、自分の考えを決められなくなる。
  • 実行機能障害:買い物や料理などの日常的な作業が困難になる。
  • 言語障害:言葉の意味がわからなくなったり、適切な言葉が出てこなくなる。
  • 視空間障害:道に迷ったり、物の距離感がつかめなくなる。

周辺症状(BPSD)は、認知症に伴う行動や心理の症状です。中核症状と同様に、患者さんの日常生活に支障をきたします。代表的な周辺症状(BPSD)は以下の通りです。

代表的な周辺症状(BPSD)

  • 徘徊:歩き回ったり、家から出て行ったりする。
  • 暴力:暴言を吐いたり、物を壊したりする。
  • 幻覚:実際には存在しないものを見たり、聞こえたりする。
  • 妄想:根拠のないことを信じて疑わない。
  • 不安・抑うつ:常に不安そうにしていたり、気分が落ち込んだりする。
  • 無気力:何もする気がなくなる。

■治療法

認知症の根本的な治療法はまだありませんが、症状の進行を遅らせたり、生活機能を維持したりするための治療法はあります。

  • 薬物療法:ドネペジル塩酸塩(アリセプト)やメマンチン塩酸塩(メマリー)などの薬が使われます。
  • 非薬物療法:認知機能訓練や作業療法、心理療法などが有効です。
  • 生活環境の改善:安全で住みやすい環境を整えることが重要です。

■家族が患者さんに接するときのポイント

家族は患者さんの症状を理解し、適切に接することが重要です。以下は、そのためのポイントです。

  • 患者さんの話をよく聞く:患者さんの話を最後まで聞き、共感を示しましょう。
  • 患者さんの気持ちを受け止める:否定したり、批判したりせず、患者さんの気持ちを受け止めましょう。
  • 無理強いしない:患者さんのペースに合わせ、無理強いは避けましょう。
  • 日常生活の中でサポートする:家事や買い物などの日常生活の中で、患者さんをサポートしましょう。
  • 専門家に相談する:症状がひどい場合は、医師やケアマネジャー(介護支援専門員)などの専門家に相談しましょう。

■施設職員が介護するときのポイント

施設職員も、患者さんの症状を理解し、適切な対応をすることが重要です。以下は、そのために心がけると良いことです。

  • 患者さんのペースに合わせる:焦らず、ゆっくりと丁寧に接しましょう。
  • わかりやすい言葉で話す:専門用語は避け、簡潔でわかりやすい言葉で話しましょう。
  • 非言語コミュニケーションを大切にする:表情や声のトーンで気持ちを伝えましょう。
  • 共感的な態度を示す:患者さんの話をよく聞き、共感を示しましょう。
  • 介護技術を習得する:認知症の患者さんへの介護には、専門的な知識と技術が必要です。

■まとめ

認知症は、介護する側にとっても、患者本人にとっても負担が大きい病気です。しかし、症状を理解し適切に対応することで、患者本人ができる限り自立した生活を送れるように支援できます。家族と施設職員が協力し、患者と向き合っていくことが大切です。

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