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認知症
【医師監修】認知症の記憶障害と介護のポイント
『3分で読める認知症』として、『⑩ 記憶障害』をお届けいたします。
認知症は、高齢者にとって特に身近な病気の一つです。その中でも、記憶障害は最も一般的な症状であり、介護者にとって大きな課題となっています。
ここでは認知症の記憶障害について、その種類、単なる「もの忘れ」との違い、特徴、治療法、そして介護者による対応のポイントについて、詳しく解説します。
■記憶の種類
記憶には大きく分けて、短期記憶と長期記憶の2種類があります。
- 短期記憶:現在の出来事や会話の内容など、短期間で記憶するものです。数秒~数時間ほど保持されますが、すぐに忘れてしまうこともあります。
- 長期記憶:過去の出来事や知識、経験など、長期的に記憶するものです。数時間~一生涯保持されます。
認知症の記憶障害は、主に短期記憶に影響を及ぼします。
■単なるもの忘れと認知症の記憶障害の違い
年をとると「もの忘れ」は、誰にでも起こり得ます。しかし、認知症の記憶障害は、日常生活に支障をきたすほど深刻なものです。
単なる「もの忘れ」
- どこかに置いたものを探しても、すぐに見つかることが多い。
- 重要な約束や予定を忘れない。
- 道に迷っても、すぐに元に戻れる。
認知症の記憶障害
- 同じことを何度も聞いたり言ったりする。
- 大切な約束や予定を忘れてしまう。
- 道に迷って、元に戻れない。
- 時間や場所の感覚がおかしくなる。
- 現実と空想の区別がつかなくなる。
■認知症の記憶障害の特徴
認知症の記憶障害には、いくつかの特徴があります。
- 短期記憶の障害:最近の出来事や会話の内容をすぐに忘れてしまう。
- 長期記憶の障害:過去の出来事や身近な人の顔などを忘れてしまう。
- 空間認識能力の障害:道順を間違えたり、家のどこに何があるのかわからなくなったりする。
- 時間感覚の障害:曜日や日付を間違えたり、適切なタイミングに行動できない。
これらの症状は、認知症の種類や進行度によって程度が異なります。また、脳のどの部位が障害されているかによっても、現れる症状が異なります。
■記憶障害の治療法
認知症の記憶障害を、完全に治すことはできません。しかし、進行を遅らせたり、日常生活をより快適に過ごせるようにするための方法はいくつかあります。
- 薬物療法:アリセプト(ドネペジル)などの薬剤が、記憶障害の改善に効果がある場合があります。
- 非薬物療法:脳トレや読書、散歩など、脳を活性化する活動を取り入れる。
- 生活習慣の改善:規則正しい睡眠と食事を心がけ、適度な運動をする。
- ストレスの軽減:ストレスをためないように、趣味を楽しんだり、リラックスできる時間を作る。
- 環境の整備:見慣れた家具や写真を置くなど、住いの環境を落ち着かせる。
■記憶障害がある認知症患者さんへ介護するときのポイント
記憶障害がある認知症患者さんへの介護には、以下のようなポイントがあります。
- 本人のペースに合わせる:焦らず、ゆっくりと丁寧にコミュニケーションを取る。
- わかりやすい言葉で話す:短くシンプルな言葉で、ゆっくりと話す。
- 非言語コミュニケーションを活用:表情やジェスチャーなどを活用する。
- 過去の記憶を呼び起こす:昔の写真や音楽などを活用する。
- 共感と理解を示す:患者の気持ちに寄り添い、共感を示す。
- 安全な環境を作る:転倒やケガを防ぐために、安全な環境を作る。
- 介護者間の情報共有:患者の状態や対応方法について、介護者同士で情報共有する。
■まとめ
認知症の記憶障害は、家族や介護職員にとって大きな負担となります。しかし、患者さんの気持ちに寄り添い、適切な対応をすることで、症状をある程度コントロールし、穏やかに生活を送れます。