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認知症
【医師監修】認知症による理解力・判断力低下と介護者の対応
『3分で読める認知症』として、『⑫ 理解力・判断力低下』をお届けいたします。
認知症介護において、理解力や判断力の低下は、介護者にとって大きな課題の一つです。適切な対応がなければ、認知症の方と介護者の双方に負担を増加させ、場合によっては事故やトラブルにつながる可能性も秘めています。
ここでは、認知症の理解力・判断力低下のメカニズムと症状、そして介護者が円滑な介護を実現するために必要な知識と具体的な対応方法について解説します。
■ 認知症による理解力・判断力低下のメカニズム
認知症は、脳の神経細胞が損傷することで起こる疾患です。進行性の病気であり、記憶障害や見当識障害、言語障害、実行機能障害など、さまざまな症状が現れます。
理解力・判断力低下は、主に以下の脳機能の障害によって起こります。
- 前頭葉機能障害:計画や判断、抑制などの高次機能をコントロールする前頭葉の機能が低下すると、複雑な思考や意思決定が困難になります。
- 海馬(かいば)機能障害:記憶の形成や保持を司る海馬の機能が低下すると、短期記憶や長期記憶が損なわれ、過去や現在の出来事を思い出せなくなります。
- 注意機能障害:集中力や注意力を維持する機能が低下すると、指示を理解したり、会話に集中したりすることが難しくなります。
■ 認知症による理解力・判断力低下の症状
理解力・判断力低下の症状は、認知症の種類や進行度によってさまざまですが、主な例としては以下のようなものが挙げられます。
- 質問への理解が困難:抽象的な質問や複雑な指示を理解できず、適切な回答をしたり、行動に移したりすることが難しくなります。
- 判断ミス:状況を正しく判断できず、危険な行動をとったり、金銭的な被害を受けたりする可能性があります。
- 時間や場所の把握(はあく)困難:現在の日付や時間、自分がいる場所を把握できず、不安や混乱を感じることがあります。
- 計画や実行の困難:買い物や食事の準備など、日常生活に必要な行動を計画したり、実行したりすることが困難になります。
- 意思決定の困難: 服装や食事など、日常生活におけるさまざまな選択肢の中から適切なものを選ぶことが困難になります。
■ 介護者に求められる知識と対応
認知症による理解力・判断力低下に対応するためには、介護者は以下の知識とスキルを身につけることが重要です。
- 認知症に関する知識:認知症の種類や症状、進行度、原因などに関する知識を習得し、認知症の方の状態を正しく理解することが必要です。
- コミュニケーション能力:認知症の方の理解力や集中力に合わせて、ゆっくり・丁寧に、簡潔な言葉でコミュニケーションを取る必要があります。
- 非言語コミュニケーション:表情や声のトーン、ジェスチャーなどを活用し、言葉以外のコミュニケーションを円滑にすることが重要です。
- 環境調整:認知症の方の能力や状態に合わせた環境を設定し、安全で快適な生活空間を提供する必要があります。
- 介護技術:認知症の方の日常生活を支援するためのさまざまな介護技術を習得し、適切な場面で活用することが必要です。
■ 具体的な対応方法
以下に、理解力・判断力低下に対応する具体的な対応方法の例をいくつか挙げます。
- 質問の仕方:抽象的な質問や複雑な指示は避け、具体的な質問や指示をするように心がけましょう。
- 選択肢の提示:意思決定が困難な場合は、複数の選択肢の中から選ぶように提示することで、負担を軽減できます。
- 本人のペースに合わせる:介護行為やコミュニケーションをとる際には、認知症の方のペースに合わせ、あせらず待つことが大切です。
- 不安の解消:認知症の方が不安を感じている場合は、共感を示し、優しく声をかけることで、不安を和らげられます。
- 専門家への相談: 介護者が対応に困っている場合は、医師やケアマネージャーなど、専門家に相談することが重要です。
■ まとめ
認知症による理解力・判断力低下は、介護者にとって大きな課題ですが、適切な知識と対応方法を身につけることで、円滑な介護を実現することが可能です。認知症の人の家族や介護者は多職種と連携し、認知症の方の尊厳を守り、その人らしい生活を支援していきましょう。