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【医師監修】認知症における失行
『3分で読める認知症』として、『⑮ 失行』をお届けいたします。
「服がうまく着られない」「この道具、どう使えばいいの?」
認知症の方から、こんな言葉をかけられたことはありませんか?
これは、認知症の症状の一つである「失行」かもしれません。この記事では、失行による具体的な困りごとと、介護者がどのように対応すればいいのかを、具体的な事例を交えてご紹介します。

■失行とは
失行とは、脳の損傷によって、身ぶり手ぶりや衣服の着脱、食事などの日常生活に必要な動作を正しく実行できなくなる症状です。認知症の方に多く見られますが、必ずしも認知症だけが原因ではありません。脳卒中や脳腫瘍、頭部外傷などによっても起こります。
■認知症により起こる失行の特徴
認知症による失行には、以下のような特徴がみられます。
・複雑な動作が苦手:衣服の着脱や食事など、複数のステップが必要な動作が困難になります。
・道具の使い方を忘れる:フォークやナイフなどの道具の使い方を忘れてしまったり、正しく使えなくなったりします。
・指示が理解できない:動作の指示を理解できず、うまく実行できないことがあります。
・空間認知能力の低下:左右や前後などの空間認識が難しくなり、動作に支障をきたすことがあります。
■失行の治療
失行の治療法は、原因によって異なりますが、一般的には以下のような方法があります。
・理学療法:運動機能の改善や、日常生活に必要な動作の練習を行います。
・作業療法:日常生活での活動能力の向上を目指し、食事や着替えなどの動作を練習します。
・言語療法:指示の理解やコミュニケーション能力の改善を目指します。
・薬物療法:脳卒中などが原因の場合は、脳の血流を改善する薬などが使われることがあります。
■失行の人を介護するときのポイント
失行の人を介護する際には、以下の点に注意することが大切です。
・本人のペースに合わせる:焦らず、ゆっくりと丁寧に介助しましょう。
・動作を分解して説明する:複雑な動作は、小さなステップに分解して説明し、一つずつ練習しましょう。
・本人の意思を尊重する:できるだけ本人に動作してもらい、本人の意思を尊重しましょう。
・安全な環境を作る:転倒などの危険を防ぐために、安全な環境作りを心がけましょう。
・コミュニケーションを大切にする:言語的および非言語的なコミュニケーションを大切にし、本人が安心して過ごせるようにしましょう。
■まとめ
失行は、認知症の方に多く見られる症状ですが、適切な治療や介護によって改善できます。介護者は、失行の特徴を理解し、認知症の方に寄り添った介護することが大切です。