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【医師監修】認知症の行動・心理症状(BPSD)について〈総論〉
『3分で読める認知症』として、『⑰ 行動・心理症状(BPSD)』をお届けいたします。
認知症の方の介護をしていると、「落ち着きがない」「怒りっぽくなった」「見えないものが見えると言う」など、戸惑うような行動や言動に直面することがあります。
これらは「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれる、認知症に伴って現れる症状の一部です。BPSDはなぜ起こるのか?どんな対応が効果的なのか?
この記事では、BPSDの基礎知識から原因、治療・ケアのポイントまで、介護に役立つ情報をわかりやすく解説します。

■BPSDとは?
認知症の方に見られる、落ち着きのなさや攻撃性、妄想、幻覚など、いろいろな行動や心理の変化を総称して、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。認知症に伴う脳の機能低下が、これらの症状を引き起こす主な原因と考えられています。
■BPSDの症状
BPSDの症状は、人によって、また、状況によって大きく異なります。代表的な症状としては、次のものが挙げられます。
- 不安や焦燥感:落ち着きがなく、あちこち歩き回ったり、同じことを繰り返したりする。
- 攻撃性:言葉で攻撃したり、物を投げたり、人に危害を加えたりする。
- 抑うつ:元気がなく、食欲不振、不眠などの症状が見られる。
- 妄想:実際には起こっていないことを信じ込んでしまう。
- 幻覚:実際にはいない人や物が見える、聞こえる。
- 徘徊(はいかい):あちこち歩き回ってしまう。
■BPSDが起こるメカニズム
BPSDが起こるメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、脳の機能低下に加えて、以下の要因が考えられています。
- 環境要因:周囲の環境の変化、騒音、不快な刺激など。
- 身体的要因:痛み、便秘、尿路感染症など。
- 心理的要因:孤独感、不安感、過去の経験など。
これらの要因が複合的に作用し、BPSDを引き起こすと考えられています。
■BPSDの治療
BPSDの治療は、薬物療法と非薬物療法の両方が行われます。
- 薬物療法:抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬などが使用されます。副作用が起こりやすいので、注意が必要です。
- 非薬物療法:環境調整や認知行動療法、アロマセラピー、音楽療法など、さまざまなアプローチが試みられています。
■BPSDに対して介護するときのポイント
BPSDに対して介護する上では、以下の点に注意することが大切です。
- 原因の特定:BPSDを引き起こしている原因を特定し、可能な限り取り除く。
- 環境調整:安全で落ち着ける環境を整える。
- コミュニケーション:相手の気持ちを理解し、穏やかに接する。
- 声かけ:言葉で優しく声をかける。
- スキンシップ:穏やかなタッチで安心感を与える。
- 活動の提供:興味のある活動を提供する。
- チームでの連携:医師や看護師、介護職員、家族が連携して、適切なケアを提供する。
BPSDは、介護する人にとっても、大変な負担となることがあります。しかし、適切なケアを提供することで、症状の緩和や、より良い生活の質の向上につながる可能性があります。
■まとめ
BPSDは、認知症に伴ういろいろな行動や心理の変化を指します。原因がさまざまなので、治療には薬物療法と非薬物療法の両方が必要です。介護する上では、原因の特定や環境調整、コミュニケーションなど、いろいろな工夫が必要です。