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認知症
【医師監修】認知症の徘徊(はいかい)について
『3分で読める認知症』として、『⑱ 認知症の徘徊(はいかい)』をお届けいたします。
「どうして目を離すとすぐに外に出ようとするの…?」
認知症の徘徊には、本人の不安や混乱、思いがけない理由が隠れていることがあります。大切なのは、無理に止めるのではなく、まず理解すること。本記事では、徘徊の種類や起こる理由、家族ができる工夫をやさしく解説します。

■徘徊とは?
認知症の方に見られる徘徊は、単に「歩き回る」という行為だけではなく、本人の心の状態や状況を反映した複雑な行動です。昼夜を問わず、目的がないように歩き回り、時には迷子になることもあります。介護の現場では、徘徊は大きな課題の一つであり、安全確保や本人への適切な対応が求められます。
■徘徊のパターン
- 目的のない徘徊:特定の場所や物を探しているわけではなく、ただ歩き回る行為です。
- 探し物:過去に住んでいた家や、失くしたものを探し求める行動です。
- 脱出:閉じ込められていると感じ、そこから抜け出そうとする行動です。
- 繰り返し行動:特定の場所を何度も往復するなど、同じ行動を繰り返すことがあります。
■徘徊が起こるメカニズム
徘徊の原因は、認知症の種類や進行度、本人の性格などによってさまざまです。
- 見当識障害:時間や場所、自分が誰であるかといったことが分からなくなることで、混乱し徘徊につながることがあります。
- 記憶障害:過去の出来事や経験が混ざり合い、現実と妄想がごちゃ混ぜになることで、徘徊を引き起こすことがあります。
- 不安やストレス:環境の変化や介護者の交代などでストレスを感じると、落ち着けなくなり徘徊につながる場合があります。
- 幻視や幻聴:実際にはいない人や物が視えたり聞こえたりすることで、それらから逃れようとして徘徊することがあります。
■徘徊の治療
現在、徘徊を完全に治す治療法はありません。しかし、薬物療法や非薬物療法を組み合わせることで、徘徊の頻度や距離を減らすことは可能です。
- 薬物療法:不安や興奮を抑える薬、幻視や幻聴を軽減する薬などが使用されます。
- 非薬物療法:
- 環境調整:部屋の照明を明るくする、家具の配置を見直すなど、環境を工夫することで、徘徊を予防できます。
- 認知訓練:簡単な計算問題やパズルなど、脳を活性化させる活動を取り入れることで、徘徊を抑制する効果が期待できます。
音楽療法やアロマセラピー:リラックス効果を高め、不安を軽減させることで、徘徊の予防につながります。
■徘徊に対して介護するときのポイント
- 安全確保:外出防止のために窓やドアに鍵をかける、見守りカメラを設置するなど、安全対策を徹底しましょう。
- 本人の気持ちに寄り添う:徘徊は、本人がSOSを発している可能性があります。焦らず、穏やかな声かけを心がけましょう。
- 無理に止めない:徘徊を止めようとすると、かえって興奮してしまい、状況が悪化する可能性があります。
- 規則正しい生活:睡眠時間を確保し、食事をバランスよくとるなど、規則正しい生活を送るように促しましょう。
- チームで連携:家族や介護職員で連携し、情報を共有することで、より適切なケアを提供できます。
■まとめ
徘徊は、認知症に伴う複雑な問題です。しかし、本人の状態や状況を理解し、適切な対応を行うことで、徘徊による事故を予防し、QOL(生活の質)の向上につなげられます。