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【医師監修】認知症の易怒性(いどせい)について:なぜ怒りっぽくなるのか?
『3分で読める認知症』として、『⑲ 認知症の易怒性(いどせい)』をお届けいたします。
認知症になると、些細なことで怒りっぽくなったり、イライラしやすくなったりすることはありませんか?
それは「易怒性(いどせい)」と呼ばれる認知症の症状の一つです。
なぜ認知症になると怒りっぽくなるのか、そのメカニズムから具体的な症状、そして接する上での大切なポイントまで、この記事で分かりやすく解説します。
ご本人だけでなく、介護する方も穏やかな日々を送るために、ぜひ参考にしてください。

■易怒性とは
認知症の方の中には、些細なことで怒りっぽくなったり、いら立ちやすくなったりする方がいます。このような状態を「易怒性」と言います。
■易怒性の症状と具体例
易怒性の症状は、人によってさまざまですが、以下のような行動が見られることがあります。
- 些細なことで怒り出す: 言葉遣いや態度、待ち時間が長いなど、普段なら気にならないようなことでも、すぐに怒り出すことがあります。
- 周囲の人を攻撃する:言葉で攻撃したり、物を投げつけたりするなど、物理的な攻撃に発展することもあります。
- 不機嫌な態度:常に顔をしかめたり、ため息をついたり、言葉少なになったりするなど、周囲に対して拒絶的な態度を示します。
- 不安や焦燥感:何かを失ってしまうのではないか、という不安や、焦燥感からいら立ちやすくなります。
■易怒性が起こるメカニズム
易怒性が起こるメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、脳の機能低下が大きく関わっていると考えられています。
- 前頭葉の機能低下:前頭葉は、感情のコントロールや判断力に関わる重要な部位です。認知症によって前頭葉の機能が低下すると、感情のコントロールが難しくなり、易怒性が現れることがあります。
- 記憶障害:記憶障害により、過去の出来事や現在の状況を正確に把握できなくなり、混乱や不安を感じ、それが易怒性につながることがあります。
- コミュニケーションの困難:自分の気持ちをうまく言葉にできず、もどかしさやいら立ちを感じることがあります。
■易怒性への対応
易怒性に対して、直接的な治療法はありません。しかし、薬物療法や非薬物療法を組み合わせることで、症状を軽減させることができます。
- 薬物療法:不安や抑うつ状態を改善する薬、幻覚や妄想を抑える薬などが使用されることがあります。
- 非薬物療法:行動療法や認知療法、アロマセラピー、音楽療法などが行われます。
■易怒性に対して介護するときのポイント
易怒性のある方を介護する上では、以下の点に注意することが大切です。
- 穏やかな態度:怒鳴ったり、急かしたりせず、穏やかな態度で接しましょう。
- 共感:相手の気持ちを理解しようと努め、共感の言葉をかけましょう。
- 簡単な言葉:専門用語を使わず、ゆっくりと、簡単な言葉で説明しましょう。
- 選択肢を与える:何をしたいか、何を食べたいかなど、選択肢を与えることで、自立心を尊重しましょう。
- 周囲の環境:照明を明るくしたり、騒音を減らしたりするなど、周囲の環境を整えましょう。
- チームでケア:家族や介護職員と協力し、一貫したケアを提供しましょう。
- 自分のケアも大切:介護者自身もストレスをためないように、定期的に休息を取り、リフレッシュしましょう。
易怒性は、本人にとっても、周囲の人にとってもつらい状況です。しかし、適切なケアを行うことで、症状を改善し、より穏やかな日々を送ることができます。