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認知症
【医師監修】認知症の「幻覚」はなぜ起こる?ご家族が知っておきたい原因と対応法
『3分で読める認知症』として、『㉔ 幻覚』をお届けいたします。
認知症患者さんの幻覚:本人にとっては現実…

■はじめに
認知症の患者さんの中には、実際にはいない人や物が視えたり聞こえたりする、幻覚を経験される方がいます。ご家族や介護職員にとっては、これらの症状にどう接すれば良いのか、不安に感じられることもあるでしょう。今回は、認知症患者さんの幻覚について、その定義から対応策まで、わかりやすく解説していきます。
■幻覚とは?
幻覚とは、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を介して、実際には存在しないものを感じてしまう症状です。認知症の患者さんによく見られるのは、視覚的な幻覚(幻視)と聴覚的な幻覚(幻聴)です。例えば、「誰かが部屋にいる」と感じたり、「誰かの声が聞こえる」といった体験をしたりすることがあります。
■幻覚が起こるメカニズム
幻覚が起こるメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、脳の機能低下が大きく関わっていると考えられています。認知症によって脳の神経細胞が損傷を受けると、情報の処理に誤りが生じ、現実と想像が混ざり合ってしまうことがあるのです。
■幻覚の予防策
残念ながら、幻覚を完全に予防することは難しいですが、以下の点に注意することで、症状の悪化を防げます。
- 規則正しい生活:睡眠時間を確保し、食事をバランス良く摂るなど、生活習慣を整えることが大切です。
- 刺激の少ない環境:明るすぎたり暗すぎたりする場所、騒がしい場所を避け、リラックスできる環境を整えましょう。
- 認知機能の維持:脳トレや軽い運動など、認知機能を維持するための活動を取り入れることも有効です。
■幻覚への対応策
幻覚に対しては、以下のような対応が考えられます。
- 否定しない:「そんな人はいませんよ」と否定してしまうと、患者さんは混乱してしまうことがあります。
- 共感する:患者さんの気持ちに寄り添い、「怖い思いをしているのですね」と共感の言葉をかけてあげましょう。
- 現実の世界へ誘導する:幻覚を見ている最中に、「今、あなたは〇〇さんの家で、〇〇さんと一緒に過ごしていますね」など、現実の世界へ誘導する言葉かけも有効です。
- 医師への相談:幻覚が日常生活に大きな影響を与えている場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
■治療薬
幻覚に対しては、抗精神病薬などの薬物療法が用いられることがあります。ただし、薬には副作用もありますので、医師とよく相談して、治療を進めることが重要です。
■介護するときのポイント
- 穏やかな声かけ:患者さんの気持ちを落ち着かせるような、穏やかな声かけを心がけましょう。
- 安全な環境:幻覚によって、患者さんが転倒したり、ケガをしたりする危険性があります。安全な環境を整えましょう。
- 介護者自身のケア:介護者は、患者さんのケアだけでなく、自分の心身の健康にも気を配ることが大切です。
■まとめ
認知症患者さんの幻覚は、本人にとっても、ご家族や介護職員にとっても、つらいものです。しかし、正しい知識と対応策を知り、患者さんの気持ちに寄り添うことで、より良いケアを提供できます。