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【医師監修】認知症患者さんの拒食:その原因と対応について

『3分で読める認知症』として、『㉕ 拒食』をお届けいたします。

認知症の進行に伴い、食事に関する問題、特に拒食は、介護者にとって大きな悩みの種となります。今回は、認知症患者さんの拒食について、その定義や具体例、起こるメカニズム、予防策、対応策、治療薬、そして介護するときのポイントを解説していきます。

■拒食とは?

拒食とは、通常であれば食事を摂るべき状況において、意図的に食事を拒否したり、量が著しく減少したりする状態を指します。認知症患者さんでは、さまざまな要因が複雑に絡み合い、拒食が生じることが多く見られます。

■拒食の具体例

  • 食事への興味の喪失:食事に集中できず、すぐに別のことに気を取られてしまう。
  • 食べ物の拒否:特定の食べ物や飲み物を嫌がる、または全く口にしない。
  • 飲み込みの困難:咀嚼(かむこと)や嚥下(飲み込むこと)の機能が低下し、食事を途中でやめてしまう。
  • 食欲不振:体がだるく、何も食べる気がしない。

■拒食が起こるメカニズム

認知症による脳の機能低下が、拒食を引き起こす主な原因です。具体的には、次のものなどが挙げられます。

  • 感覚の変化:味覚や嗅覚が鈍くなり、食べ物の美味しさが感じられなくなる。
  • 記憶障害:いつ食事をしたか、何を食べたかなど、食事に関する記憶が曖昧(あいまい)になる。
  • 幻覚・妄想:食べ物に異物が入っている、食べ物が毒にされているなど、誤った認識を持つ。
  • うつ症状:意欲の低下や孤独感から、食事に対する意欲が失われる。

■予防策

  • 規則正しい食事:できる限り同じ時間に食事する。
  • 食事環境:周囲の騒音を避け、落ち着いた雰囲気で食事ができるようにする。
  • 口腔ケア:歯磨きや口腔ケアを丁寧に行い、口の中を清潔に保つ。
  • 栄養バランス:栄養士など専門家のアドバイスを受け、栄養バランスの取れた食事を提供する。

■対応策

  • 小さな食事:一度に多くの量を食べさせようとせず、少量を頻繁に与える。
  • 好きな食べ物:患者さんの好きな食べ物や飲み物を提供する。
  • 手助け:必要に応じて、スプーンで口に運んだり、飲み物を飲ませたりする。
  • 食事の楽しみ:食事の時間を楽しめるように工夫する(音楽を流す、一緒に食べるなど)。

■治療薬

拒食に対する特効薬はありませんが、食欲不振やうつ症状に対して、医師が適切な薬を処方する場合があります。

■介護するときのポイント

  • 患者さんの状態を観察:食欲の変化や飲み込みの状態、体重の変化などに注意深く観察する。
  • 無理強いしない:患者さんの意向を尊重し、無理に食事を食べさせようとしない。
  • 周囲の協力:他の家族や介護者と協力し、食事の時間を円滑に進める。
  • 専門家への相談:栄養士や医師など、専門家のアドバイスを受ける。

認知症患者さんの拒食は、患者さんのQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、健康状態の悪化にもつながる可能性があります。介護者は、患者さんの状態に合わせて、適切に対応することが大切です。

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