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【医師監修】認知症の方の暴力・暴言への理解と対応
『3分で読める認知症』として、『⑳ 暴力・暴言』をお届けいたします。
「どうして、あんなことを言うんだろう?」
「まさか、暴力を振るうなんて…」
認知症のご家族の予期せぬ言動に、戸惑いや悲しみを覚えたことはありませんか? 怒鳴り声、心ない言葉、時には手をあげてしまう。それは、決してご本人のわがままや意地悪ではありません。
本日は、認知症の方に見られる暴力・暴言という、介護の現場で直面する可能性のある難しい症状について、深く掘り下げていきます。なぜ、大切な人がそのような行動をとってしまうのか。その複雑なメカニズムを理解することから、適切な対応への第一歩が始まります。
この記事では、具体的な暴力・暴言の例から、その背景にある不安、痛み、孤独感、過去の記憶、幻覚・妄想といった要因を解説。さらに、ご家族や介護者がどのように向き合い、対応していけば良いのか、具体的な方法と大切な心構えをご紹介します。
もし今、暴力や暴言に苦しんでいる方がいらっしゃいましたら、決して一人で悩まないでください。この記事が、少しでもあなたの心の支えとなり、より穏やかな介護へと繋がる一助となれば幸いです。

■暴力・暴言とは?
認知症の方が見せる暴力や暴言は、単なる反抗や意地悪ではなく、病気の一つの症状として捉えることが重要です。ご本人もつらい状況にある中で、周囲へのSOSを発している可能性があります。
■暴力・暴言の具体例
- 言葉の暴力:怒鳴る、罵倒する、中傷する
- 身体的な暴力:殴る、蹴る、物を投げつける
- 物への攻撃:家具を壊す、窓を割る
- 拒否行動:食事や着替えを拒む、介護を拒否する
これらの行動は、状況や本人の性格によってさまざまです。
■暴力・暴言が起こるメカニズム
なぜ認知症の方が暴力や暴言を向けてくるのか、そのメカニズムは複雑です。
- 不安や恐怖:周囲の変化や自分の状況がわからず、不安や恐怖を感じている
- 痛み:身体の痛みや不快感が原因でイライラしている
- 孤独感:周囲とのコミュニケーションがうまくいかず、孤独を感じている
- 過去の記憶:過去の経験やトラウマがよみがえり、混乱している
- 幻覚・妄想:幻覚や妄想を抱き、現実と区別がつけられない
これらの要因が複合的に作用し、暴力や暴言につながることがあります。
■暴力・暴言への対応方法
認知症の暴力・暴言に対して、効果的な対応方法は以下の通りです。
- 原因を探る:暴言や暴力の原因を特定し、状況に応じた対応を行う
- 環境を整える:安全な環境を確保し、本人が落ち着けるような空間を作る
- コミュニケーション:穏やかな声かけや表情で、本人の気持ちを理解しようと努める
- 専門家の相談:介護の専門家や医師に相談し、適切なアドバイスを受ける
■暴力・暴言に対して介護するときのポイント
- 本人の気持ちを理解する:暴言や暴力の裏には、必ず何かしらの感情が隠されています。
- 冷静さを保つ:介護者が興奮したり、感情的に対応したりすると、状況を悪化させる可能性があります。
- 安全確保:介護者や認知症の方、周囲の安全を考え、必要であれば距離を取る
- チームで対応:一人だけで抱え込まず、介護施設の職員や他の家族と協力して対応する
大切なのは、認知症の方を責めたり、怒ったりせず、病気の一つの症状として受け止めることです。
■まとめ
認知症の方の暴力・暴言は、決して本人の意思ではなく、病気によって引き起こされる行動です。介護する方々は、認知症の方の気持ちを理解し、安全に配慮しながら、適切な対応を行うことが大切です。もし、暴力や暴言に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、必ず周囲に相談してください。