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認知症
【医師監修】認知症に合併した「せん妄」の原因・予防・対応法を解説
『3分で読める認知症』として、『㉓ せん妄』をお届けいたします。
「最近、認知症の親が急に落ち着きがなくなり、『誰かがいる』『盗まれた』などと言い出すようになった…」「夜中に徘徊したり、意味不明なことを叫んだりして困っている…」
そんな変化に戸惑っているご家族はいらっしゃいませんか?
それは「認知症が進行した」のではなく、「せん妄」という一時的な状態かもしれません。
せん妄は早めに気づき、適切に対応することで回復が期待できるものです。
本記事では、「せん妄」とは何か、認知症との違い、主な症状、原因、予防策、そしてご家族ができる具体的な対応までをわかりやすく解説しています。
「突然の変化にどう向き合えばいいか分からない」「病院に連れて行くべき?」「介護のポイントは?」といったお悩みを抱える方に、安心と手がかりをお届けできる内容です。

■せん妄とは?
皆さんが介護されている認知症の方が、急に落ち着きがなくなり、幻覚や妄想が見られるようになったり、昼夜が逆転したりするといった経験はありませんか?このような状態を「せん妄」といいます。せん妄は、認知症そのものではなく、何らかの原因によって一時的に起こる意識障害の一種です。
■せん妄の具体的な例
- 幻覚:壁に人がいる、虫がはっているなど、実際には存在しないものが見える
- 妄想:誰かに追われている、盗まれたなど、根拠のない考えを持つ
- 興奮:落ち着きがなく、大声を出したり、周囲を攻撃したりする
- 不眠:夜眠れず、昼間に眠ってしまう
- 注意力の低下:周囲の状況がつかめず、指示に従えない
■せん妄の原因
せん妄は、脳の機能が一時的に低下することで起こります。その原因はさまざまで、次のようなものがあげられます。
- 感染症:尿路感染症、肺炎など
- 脱水:体内の水分が不足すること
- 痛み、かゆみ、便秘、排尿困難
- 薬の副作用:特に精神科薬剤や鎮痛剤など
- 代謝異常:低血糖、低酸素血症など
- 感覚の変化:視力低下、聴力低下など
- 環境の変化:入院、転居など
■せん妄の予防策
- 身体の状態を良く保つ:定期的な健康チェック、バランスの取れた食事、十分な睡眠
- 薬の副作用に注意する:医師や薬剤師と連携し、必要に応じて薬を調整する
- 環境を整える:明るい部屋、時計やカレンダーの設置、なじみの品を置く
- 規則正しい生活:昼夜のリズムを保つ
- 刺激を少なくする:混雑した場所を避け、穏やかな音楽を聴く
■せん妄への対応策
- 原因の究明と解決:医師に相談し、原因となる病気を治療する
- 安全確保:転倒や暴れるなどの危険から保護する
- 穏やかな声掛け:落ち着かせて、安心感を与える
- 環境の調整:光を調整したり、騒音を減らしたりする
- 無理強いをしない:本人のペースに合わせて対応する
- 薬物療法:副作用のリスクもあるため、医師とよく相談する
■介護するときのポイント
- 変化に気づく:普段の様子と比べて、少しでも変化があれば注意深く観察しましょう。
- 記録を残す:いつ頃からどのような症状が出始めたのかを記録することで、医師への報告に役立ちます。
- チームで連携:医師や看護師、介護職員などと協力して、本人に適切なケアを提供しましょう。
せん妄は、早期に発見し、適切に対応することで、症状の悪化を防ぎ、回復を早められます。認知症の方の状態をよく観察し、少しでも心配なことがあれば、遠慮なく医師や看護師、介護職員に相談しましょう。